手足が冷たい、足が冷えて眠れない……。冷えは女性に多い悩みですが、温めても治りにくい冷えは、自律神経と深く関わっている場合があります。冷えは万病の元と言われますが、冷えの自覚症状のない人やさまざまな症状の背後に冷えが存在していることもあります。暮らしの中の冷えのリスクや効果のある漢方治療を知って、冷え対策を心がけましょう。

最近増えている「ストレス冷え」
暖かい部屋に入ると、すぐに手足が温かくなりますか。それとも、なかなか温かくならないですか。みなさんは、どちらでしょうか?
漢方の診療に詳しい東京女子医科大学 東洋医学研究所 副所長の木村容子准教授は、「手足などの末梢の血流は、自律神経の働きによって調節されていますので、ストレスがかかって交感神経が緊張すると、末梢血管は収縮して血行が悪くなります。手足がなかなか温かくならない人は、自律神経の働きが乱れているために血流の調節がうまくいっていない可能性があります。これを〝ストレス冷え〞と私は呼んでいます」と話します。
ストレス冷えはこの他にも、冷えの自覚症状はあるのに診察しても冷えがない人、逆に足が氷のように冷えていても自覚症状がない人など、冷えの認識にずれが生じていることもあると言います。
便利な生活や高齢化も一因
そのほか、肩こり、頭痛、腰痛、不眠、むくみ、疲れやすい、やる気や元気がない、肌のくすみやしみ、乾燥なども、実は冷えによって起きやすい症状です。不調を訴えて受診しても体が冷えていることに気づいていない人は多く、注意が必要です。
こんな生活が習慣になっていないでしょうか。
□朝食は抜くことが多い
□冷たい飲み物や食べ物を年中食べている
□運動不足である
□夜更かしや昼夜逆転の生活をしている
□入浴はシャワーのみ
これらはすべて体を冷やします。「朝食を抜くと体温が上がる機能は働かず、筋肉不足では熱が生み出せません。昼夜逆転は日内リズムを乱して、日中に体温が上がらない人もいます。便利な生活がかえって冷えを助長している可能性があります」
また、漢方では、加齢とともに体が「陽(新陳代謝が高い状態)」から「陰(新陳代謝が低下した状態)」に変わると考えます。このため、冷えとは無縁だった男性も冷えやすくなります。
強いストレスによって自律神経の働きが乱れると、体温調節がうまくいかなくなり、冷えやすくなります。また、便利な生活や加齢によって、誰にでも冷えが起きる可能性があります。放っておくと身体や精神の諸症状、美容面にも影響します。患部を温めるだけでなく、生活全般を見直して冷えをもたらしている原因にも気をつけましょう。