亜鉛は、体内では生成されない必須の栄養成分です。
ではどのような働きをし、過不足になったときにどのような症状があらわれるのでしょう?
亜鉛は、私たちの体の皮膚、歯、骨、筋肉、肝臓、膵臓、前立腺などに約2,000mgほど存在する金属原子です。
多くの酵素に含まれており、タンパク質の合成に働きかけ細胞の成長・分化の中心的な役割を果たしています。
さらに、
- 酵素反応の活性化
- ホルモン・DNAの合成
- 免疫反応の調整
など、非常に多くの働きに関与しています。
亜鉛は、人の健康維持に必要な微量元素で、食事から摂取しなくてはなりません。
亜鉛には、
- 味覚を正常にする
- 抗酸化作用
- 免疫向上
- 子どもの発育・成長
- 美容(皮膚・髪)
- 生殖能力
- うつ状態の緩和
など、さまざまな働きがあります。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
味覚を正常にする
私たちは、舌にある「味蕾(みらい)」という受容器官によって味を感じることが可能です。
味蕾細胞は、常に新陳代謝により生まれ変わっています。
そして、生まれ変わるときに亜鉛を材料とします。
亜鉛は、味覚を正常に保つためになくてはならない栄養素です。
抗酸化作用
亜鉛は、ビタミンAの活性化に役立ちます。
ビタミンAには抗酸化作用があり、活性酸素や過酸化脂質を抑えます。
亜鉛が体内にあるビタミンAの代謝を促し、抗酸化作用を活性化させます。
よって、アンチエイジングや生活習慣病などの抑制に効果が期待できます。
免疫向上
ビタミンAには抗酸化作用だけでなく、粘膜を保護する働きがあります。
亜鉛がビタミンAを活性化することで、粘膜から入り込むウィルスや細菌から身体を守る働きを強化します。
ウイルスや細菌が体内に入り込んだときに、迎撃する白血球にも亜鉛が含まれています。
亜鉛は新しい細胞やDNAの合成に関わるので、免疫細胞や抗体の産生にも欠かせません。
そして、病気やケガの回復を早めてくれます。
子どもの発育・成長
新陳代謝が活発な子どもには、亜鉛は欠かせません。
タンパク質とともに、適切な量の亜鉛を摂取することで、全身の新陳代謝が活発になります。
成長期には、当然新陳代謝が活発になります。
子どもには、過不足なく亜鉛を含んだ食事をとらせるようにしましょう。
美容|皮膚・髪
皮膚や髪は、タンパク質でできています。
亜鉛はタンパク質の代謝を活性化し、新陳代謝をスムーズさせる働きがあります。
よって、亜鉛は皮膚や髪の健康維持に必要です。
生殖能力
亜鉛は、男性の前立腺や精子に多く存在し、精子の形成に必須とされています。
男性不妊となる、
- 精子の数や運動率が悪い
- ED(勃起不全)
などの原因も、亜鉛不足があげられます。
うつ状態の緩和
神経伝達物質が正常に働かなくなると、感情のコントロールがうまくできなくなります。
うつ状態は、脳の機能が低下し神経細胞の伝達に問題が生じることが原因の1つと考えられています。
亜鉛は神経伝達物質を作るのに必要な材料です。
亜鉛により、脳の機能を高めてうつ状態を緩和する効果が期待できます。
亜鉛は性機能の維持や美容にも欠かせない成分です。
亜鉛の効果を男女別に解説していきます。
亜鉛の男性への効果
亜鉛の男性への効果には以下のものがあります。
- 男性ホルモンの合成
- 性機能の維持
- 脱毛症(AGA)の抑制
それぞれについて、詳しく解説していきます。
男性ホルモンの合成
亜鉛は男性ホルモンであるテストステロンの合成に必須の栄養素です。
亜鉛不足になると、生殖機能が委縮することがわかっています。
男性の生殖機能のなかでも、精巣(睾丸)や前立腺には亜鉛が多く存在しています。
精巣は、精子をつくるだけではありません。
男性ホルモンも90%が精巣で作られ分泌されています。
亜鉛不足によって、男性ホルモンが減少する危険性があります。
性機能の維持
亜鉛不足で男性ホルモンが減ると、精子の量が減少すると同時に、質が落ちてきます。
睾丸が萎縮するため、性機能の維持にも問題が出てきます。
脱毛症(AGA)の抑制
男性の脱毛症であるAGAは、男性ホルモンが大きく関係しています。
男性ホルモンである「テストステロン」が「ジヒドロテストステロン」に変化するためです。発毛を阻害するため、髪の成長期が短縮され、薄毛、抜け毛の原因となります。
ジヒドロテストステロンに変化してしまうのは「還元酵素」によるものです。
亜鉛は、還元酵素の働きを抑えることにより、結果AGAの進行を抑制する効果が期待できます。
亜鉛の女性への効果
亜鉛の女性への効果には以下のものがあります。
- 女性ホルモンの合成
- 性機能(卵巣機能)の維持
- (卵子/胎児の)細胞分裂の促進
- 肌/毛髪の調整
女性ホルモンの合成
亜鉛などのミネラルが不足すると、女性ホルモンの分泌が減少します。
女性ホルモンの分泌が減ることで、子宮内膜を長く維持することができなくなります。
そのため、生理痛や生理不順が起こりやすくなります。
性機能(卵巣機能)の維持
亜鉛が不足すると、脳下垂体で作られる女性ホルモンの分泌量が減少します。
女性ホルモンの減少によって、卵巣の成長不良や機能低下につながります。
卵巣で育てられる卵胞の成長に悪影響を及ぼし、不妊症の原因となります。
(卵子/胎児の)細胞分裂の促進
妊娠・出産にも亜鉛は重要な働きをします。
受精卵は、細胞分裂を繰り返していきますが、このとき亜鉛は大量に消費されます。
胎児の成長のためにも、妊活中や妊娠中はとくに積極的に摂りたい栄養素です。
肌/毛髪の調整
亜鉛は、美肌や美髪に欠かせない栄養素です。
亜鉛は、新陳代謝を活発にする働きを持っているので、肌のターンオーバーをサポートします。
古い細胞から新しい細胞に生まれ変わるため、シミやそばかすなどを防ぐ効果が期待できます。
さらにコラーゲンの生成にも関わっており、ハリのある肌を維持する効果もあります。
髪の毛はケラチンというタンパク質で構成されています。
タンパク質を合成するためには、亜鉛が必要です。
亜鉛不足になると髪の原料となるケラチンが少なくなり、髪にハリやツヤがなくなります。
亜鉛には女性ホルモンの働きをサポートする効果があります。
具体的には、亜鉛は女性ホルモンの分泌を促します。
女性ホルモンの働きが活発化すると、心身に良い効果が期待できます。
具体的な効果は次の通りです。
- 生理不順の改善
- PMSの改善
- 子宮環境が良くなる
- 更年期障害の改善
女性ホルモンの働きが活発になると、子宮環境が良くなります。
そのため、PMS(月経前症候群)などの生理不順や生理痛の改善などに有効です。
さらに、心身の健康にも女性ホルモンは非常に大切です。
更年期障害は、閉経によって女性ホルモンが激減し、ホルモンバランスが崩れることで起こります。
頭痛やめまい、急な大量発汗といった身体的な症状のほか、イライラ、不安、うつといった精神的症状などに悩まされる方も多くいらっしゃいます。
妊娠を望む方、更年期障害を楽に乗り越えたい方などは、女性ホルモンの働きをサポートする亜鉛摂取を心がけましょう。
亜鉛が不足した場合、
- 味覚障害
- 爪・皮膚の異常や抜け毛
- 成長障がい
- 貧血
といった症状があらわれることがあります。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
味覚障害
私たちは、舌にある「味蕾」という器官により味を感じ取っています。
味蕾は、新陳代謝が非常に活発であるため、4週間前後で生まれ変わります。
新陳代謝を促すために必要な亜鉛が足りなくなると、味覚障害が起こります。
味覚障害が起こると、舌乳頭が平べったくなりピリピリするような感覚があらわれ、
- 味がわからなくなってしまう
- 何も食べていないのに口の中が苦い
といった症状があらわれます。
爪・皮膚の異常や抜け毛
亜鉛は、爪や皮膚の状態を健やかにする働きがあります。
原因不明のかゆみや慢性湿疹、爪の異常などは亜鉛不足が疑われます。
また、毛包のまわりの皮膚が炎症を起こすことで、頭頂部の脱毛が顕著になることもあります。
成長障がい
亜鉛は、細胞分裂や増殖に欠かせない成分です。
成長ホルモンや性ホルモンにも大きく関わっています。
子どもが亜鉛不足になると、成長期に身長が伸びず、低身長や低体重になる危険性があります。
貧血
貧血というと鉄不足が原因と思われる方も多いでしょう。
しかし、鉄だけでなく亜鉛も酸素を運び、赤血球を増やす働きをしています。
とくに激しいスポーツや透析を受けている方は、亜鉛不足による貧血が多くみられます。
亜鉛の過剰摂取は、健康に悪影響を及ぼします。
長い間過剰摂取を続けると、銅や鉄の吸収が阻害され貧血症状が慢性化する恐れがあります。
また急性の亜鉛中毒になると、
- 吐き気などの胃腸障害
- めまい
などの症状を引き起こします。
ほかにも亜鉛の過剰摂取により、
- 免疫障がい
- 神経症状
- HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下
といった影響を及ぼす危険性があるため注意が必要です。
亜鉛はさまざまな食品に含まれています。
バランスよく食事をとっていれば、亜鉛不足は起こりにくいと考えていいでしょう。
とくに、「牡蠣」や「ウナギのかば焼き」には多く含まれていることが知られています。
亜鉛は、
- 肉類
- 魚介類
- 大豆製品
に多く含まれています。
亜鉛は水溶性のため、煮ると煮汁などに流出してしまいます。
調理する際は、
- できるだけ短時間で加熱する
- 汁ごと飲めるように鍋物やスープにする
などの調理方法がおすすめです。