
「昼と夜の長さが同じ日」という認識の方も多いだろう。2025年の秋分の日は9月23日だが、毎年同じ日ではない。天文計算で決められ、その年によって日付は変動する。
近年では秋の大型連休「シルバーウィーク」の長さを左右するとあってか、日本人にとっては注目の祝日ともいえる馴染みのある日でもある。
秋分の日とは。実は世界的に珍しい祝日
秋分の日を祝日とする「国民の祝日に関する法律」が公布・施行されたのは、昭和23(1948)年。前述のとおり、2025年の秋分の日は9月23日だが、その年の太陽が秋分点を通過する日によって毎年日付を変える特殊な祝日である。
その年のなかで昼と夜の長さがほぼ等しくなる日を、春は「春分の日」、秋は「秋分の日」とそれぞれ定めているが、天文学に基づき祝日を決定することは、実は世界的に珍しいのだそうだ。
また、二十四節気の一つに、「秋分」という節気がある。二十四節気とは、中国から伝わった季節の節目を表す日に名称をつけたものである。これを日本が取り入れ、私たちの生活にも根づいている。
秋分の日は「秋季皇霊祭」と呼ばれていた。春分の日との違いは?

秋分の日は戦前、「秋季皇霊祭(しゅうきこうれいさい)」と呼ばれていた。
これは、歴代天皇ならびに皇族の霊をまつる儀式を行う日のことだ。昭和23(1948)年に「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」日として、秋分の日と改名。日本国民の生活に深く根づく祝日となった。
一方春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日として制定された国民の祝日。秋分の日と同じく、昭和23(1948)年を境に「春季皇霊祭(しゅんきこうれいさい)」から春分の日に改名された。
秋分の日・春分の日ともに同じ皇室行事を背景に持つ祝日ではあるが、意味には大きな違いがあることがわかる。
天文学的な違いはどうだろうか。春分の日は、その日を境に夏に向かって1日の日照時間が長くなる。一方、秋分の日は冬に向かっていくため、1日の日照時間が日に日に短くなっていく。
このように秋分の日と春分の日には、太陽の動きにも違いは見えるが、最も大きな違いはやはりその意味にあるだろう。春分の日は春の訪れを祝う意味合いが強く、秋分の日は先祖を敬う意味合いが色濃い。
秋分の日にまつわる行事食や風習
秋分の日は「彼岸の中日(ひがんのちゅうにち)」ともいわれている。秋分の日と深く関係しているこの「お彼岸」とは一体何を指すのだろうか。秋分の日にまつわる風習をひもといていこう。
秋のお彼岸にご先祖さまのお墓参り

秋のお彼岸は、秋分の日と前後3日間を合わせた7日間のことを指す。初日を「彼岸入り」、最終日を「彼岸明け」、ちょうど間の秋分の日を彼岸の中日と呼ぶ。
お彼岸は日本独特の風習で、その歴史は古く、平安時代から存在していたといわれる。また、仏教の世界では、先祖のいる悟りの世界を彼岸、今私たちが生きている世界を「此岸(しがん)」と表すそうだ。
秋分の日は昼と夜の長さがほぼ等しくになることから、この日は彼岸と此岸の距離が最も近い日と考えられ、先祖への感謝の気持ちを表しやすい日だと考えられるようになった。それがお彼岸の由来である。
こうしてお彼岸である秋分の日前後は、先祖を敬い、感謝を伝えることができる日として、お墓参りに行ったり仏壇に手を合わせたりするなど、先祖の供養をする日となった。
ご先祖さまに思いを馳せ、感謝する秋分の日
「暑さ寒さも彼岸まで」という、よく耳にする言葉がある。春分の日や秋分の日を境に、暑さ寒さがだんだんとやわらぎ、次の季節の始まりを感じるという意味だ。
夏のじりじりと焼けつくような日差しが少しずつやわらぎ、一年のなかでも特に過ごしやすい秋の始まりを知らせる秋分の日。今日では何となく過ごしてしまいがちだが、本来は、私たちの先祖を敬い、この世界に生かされていることに感謝するありがたい日だということが理解できる。
先祖に思いを馳せながら何気ない日常の幸せに感謝する。こんな時代だからこそ、今年の秋分の日はそう過ごしてみるのもよいだろう。
